アンゾフの成長マトリクスで考察する「新規顧客開拓」と「成長戦略」
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近年、国内の多くの市場において汎用化が進み、市場は年々縮小傾向にあります。
日本の経済成長率を表すGDPの伸び率も1995年ごろから下降傾向にあり、2020年度の経済成長率は新型コロナの影響を大きく受け、マイナス4.5%と戦後最低を記録しています。目まぐるしく動きを見せる市場の変化に伴い、会社の売り上げが伸びにくい厳しいビジネス環境の中で、フレキシブルに販売戦略を変えていくということは経営にとって必要不可欠と言えるでしょう。
そこで経営戦略を検討する著名なフレームワークのひとつである、「アンゾフの成長マトリクス」が再び注目を集めています。
今回は有名なこのフレームワークの概要と目的、メリット、そしてアンゾフの成長マトリクスを使って事業成長を遂げた企業事例について解説していきます。
もくじ
- 「アンゾフの成長マトリクス」とは?
- アンゾフの成長マトリクスの具体的なステップ
- 「アンゾフの成長マトリクス」で進化を遂げた企業事例7選
- 「アンゾフの成長マトリクス」における『多角化戦略』に欠かせない4つのタイプ
- 「アンゾフの成長マトリクス」における注意点
- 新規顧客開拓の課題を解決!FutureSearchで戦略的なアプローチと営業効率化を実現
- まとめ
「アンゾフの成長マトリクス」とは?
経営戦略の父として有名なアメリカの経営学者、イゴール・アンゾフ氏が考案した多角化戦略を考えるフレームワークである『アンゾフの成長マトリクス』。
企業は製品や市場の種類に応じて最適な経営戦略を立てる必要があります。
この成長マトリクスは製品と市場の両面から事業を4つの象限に分類し、「どんな分野で」「どのような人に」「何を販売していくか」など、事業の分析を行う方法として、自社の強みを生かして成長戦略を発見できるという点で優れています。
「アンゾフの成長マトリクス」基本がわかる4つの考えかた
アンゾフの成長マトリクスでは、製品を既存製品・新製品に、市場を既存市場・新市場に分け、各パターンの組み合わせで事業を以下の4つの象限に分類します。
それによって、製品と市場の両面から事業の特性を客観的に理解し、コストとリターンの面から戦略の有効性を分析することができます。
①市場浸透に比べると、④多角化は不確実性が多いため、難易度が高い
この図のように、
①既存市場×既存製品を扱う戦略を「市場浸透」
②既存市場×新規製品を扱う戦略を「新製品開発」
③新規市場×既存製品を扱う戦略を「新市場開拓」
④新規市場×新規製品を扱う戦略を「多角化」
と呼んでいます。この4象限にはそれぞれ特徴があり、製品やサービスに合わせて最適な戦略を選ぶことが大切です。
それでは、これら4象限のそれぞれで、実際に新規顧客開拓を考えてみましょう。
新規開拓で見る4象限_①市場浸透戦略
既存市場浸透の領域で成長戦略を考えるならば、売上の要素となる「顧客数」「売上単価」「購入数」「購入頻度」のいずれかを伸ばさなくてはなりません。 例えば顧客数を伸ばしたい場合、既存顧客と属性を変えずに刈り取れていない顧客を探索するという方法があります。 探索できたリードに対し、既存の顧客に行い成功してきたのと同じアプローチを行うことで、新規顧客開拓が可能になります。
- 潜在顧客の掘り起こし
- 既存顧客への販売量増加
- 販売促進や顧客サービス、商品ラインナップの充実
新規開拓で見る4象限_②新製品開発戦略
新製品開発戦略は、既存顧客に対して新規製品を導入して成長していくという考え方です。 次々と新しい味が登場するお菓子やカップヌードルといったインスタント食品などが例として挙げられます。 ただし、新商品の開発には時間と費用がかかり、事業リスクを伴います。 そのため、より市場のニーズにマッチした商品開発が肝となります。
新製品開発戦略における新規顧客開拓では、市場浸透と同じように既に取引のある顧客の属性を変えずに刈り取れていない顧客を探索し、 探索できたリードに対して既存の顧客に行って成功してきたのと同じアプローチを行っていきます。
- 新製品の開発
- 潜在顧客の掘り起こし
- 市場のシェア拡大
新規開拓で見る4象限_③新市場開拓戦略
新市場開拓戦略では、エリアや業種などについて既存顧客とは一致しない新たな属性に設定して新規に顧客を探索する必要があります。 探索できたリードに対して、既存製品のニーズがあるかを検証するようなコンテンツを考えてアプローチを行います。
つまり、既存製品のニーズを検証するためにはテストマーケティングの視点を持って、コンテンツに関しての試行錯誤が必要となります。
- 潜在顧客の掘り起こし
- 新しいチャネルの構築
- 販路拡大
新規開拓でみる4象限④_多角化戦略
多角化戦略では、既存の顧客でもなく、既存の商品・サービスでもなく、現在の事業とは全く関連しない全く新しい市場へ新しい商品開発をして展開していくという戦略です。 当然のことながら一番難易度が高く、リスクを伴います。
まずはエリア拡大など既存顧客とは一致しない新たな属性に設定し、新規顧客を探索して販売機会の拡大を行います。 探索できたリードに対して新規製品のニーズがあるかを検証するコンテンツを考えてアプローチしていきます。 新規製品のニーズを検証するためには、テストマーケティングの視点を持ってコンテンツに関しての試行錯誤が重要です。 また、アプローチの試行錯誤の中でより反応の良い条件を見つけるためにアプローチ数を多くする必要があります。
- 潜在顧客の掘り起こし
- 新製品の開発
- 新製品を新しい市場に
- アプローチ数の増加
アンゾフの成長マトリクスの新市場開拓は、企業の成長戦略として、多くの企業が採用するアプローチです。 しかしながら、新規顧客へのアプローチは既存顧客へのアプローチよりも難易度が上がります。 新規顧客開拓の方法はターゲットとする市場の種類とニーズ、さらに販売する製品・サービスの種類によっても異なります。 その差異を認識した上で適切に対応を変える必要があります。
アンゾフの成長マトリクスの具体的なステップ
それでは、アンゾフの成長マトリクスを具体的に遂行するステップについて詳しく解説していきます。
現状の分析
最初に、現在の市場状況を詳細に分析します。市場のサイズや、成長率、競合状況、および顧客の要求など、具体的に言語化していくことが大切です。
目標の設定
次に、組織の成長目標を設定します。たとえば、収益の増加、市場シェアの拡大、新規市場への進出など、営業KPIを策定していきます。
成長戦略の選択
アンゾフの成長マトリクスから、自社にとって最適な成長戦略を選択します。これには、市場浸透、市場開発、製品開発、多角化のいずれかを含みます。その際、組織の目標やリソースを考慮することが大切です。
実行計画の策定
選択した成長戦略を具体化するために、実行計画を策定していきます。行動計画や、予算、タイムライン、責任者の割り当てなど、より具体的な内容に落とし込んでいきましょう。
リソースの確保
成長戦略を実行するために必要な、資金、人材、技術などのリソースを確保します。確保したリソースは、過不足がないよう適切に配分を行うことが重要です。
実行とモニタリング
策定した実行計画を実行し、その進捗をモニタリングしていきます。モニタリングは定期的に評価を行い、調整の必要があるかどうか、慎重に判断していきます。
成果の評価
成長戦略の成果が計画通りだったのか、進捗状況や目標達成度、収益増加、市場シェアの変化などについて定期的に確認し、その都度評価します。想定通りかどうか、戦略の効果を確認することが大切です。
戦略の修正
評価の結果に基づいて、必要に応じてフレキシブルに戦略を修正または調整していきます。市場状況や競争環境が変化することを考慮に入れ、より柔軟な対応が必要です。
これらのステップを順番に追うことで、アンゾフの成長マトリクスを効果的に活用し、組織の成長戦略を計画し、実行することができます。
期間は、具体的な組織や市場状況によりますが、組織の戦略的目標、市場の競争状況、リソースの可用性などに応じて調整していくことが大切です。
「アンゾフの成長マトリクス」で進化を遂げた企業事例7選
この4象限を活用し、飛躍的に企業成長を遂げた具体的な企業事例を見ていきましょう。
1. 富士フィルム
かつて写真フィルム事業を手掛け、現在では化粧品や医薬品など幅広い事業を展開している富士フィルム。デジタルカメラの登場により、衰退していくフィルム事業に代わり、アンゾフの成長マトリクスを活用して、自社の強みを強化し、新たな事業を推進していくことに成功しています。『①市場浸透戦略』では、これまでのフィルム事業の強みを生かし、インスタントカメラ「チェキ」を発売。撮ったその場で待つことなくプリントアウトでき、ペンやシールでデコレーションして楽しむことができるという魅力から、当時の女子高生の間で×初的に流行を見せ年間500万台というデジタルカメラを超える販売台数を記録しました。『②市場開拓戦略』では、フィルム事業と相性の良い医療業界に向けて、レーザー内視鏡や医療用画像情報ネットワークシステムといった新たな技術を提供し、成功に導きました。
また『③新市場開拓戦略』では、同社の技術を活かし、液晶用フィルムや携帯電話用プラスチックレンズを開発し、スマートフォンの普及に合わせ新たな市場の開拓にも成功しています。
『④多角化戦略』においては、化粧品やサプリメント事業という全く新しい分野へ参入を行い、「アスタリフト」など同社の新たな代表商品のひとつとなった商品を生み出しています。
2. スシロー
回転寿司のチェーン店を展開している株式会社あきんどスシローでは、日本の市場成長の鈍化に伴い、アンゾフの成長マトリクスの『③新市場開拓戦略』である海外展開に乗り出しました。また、国内市場においてもテレビCMを使い、「超まぐろ尽くし」キャンペーンや、「スシロー×桃太郎電鉄」コラボの実施など、『①市場浸透戦略』を展開しながら既存顧客への販売促進を行っています。
3. トヨタ自動車
今でこそ、世界のトヨタと言われる自動車メーカーとなったトヨタ。1918年の創業当初、紡績機械の製造を行う豊田紡織株式会社としてスタートしています。1933年、『④多角化戦略』の一貫として社内ベンチャーとしてトヨタ自動車を創業。その後、トヨタ自動車工業のゴム研究部門が独立し、LED製品の生産などを展開している豊田合成や、自動車、金属、機械に限らず、石油、プラントから食品、保険まで取り扱う総合商社・豊田通商など、グループ内で様々な事業を展開しています。
4. SOMPOホールディングス
国内損害保険事業を中心に、海外保険事業、国内生命保険事業を手掛けるSOMPOホールディングスでは、保険料の引き下げや、人口減による国内市場の需要縮小を受け、アンゾフの成長マトリクス『④多角化戦略』を用いて、需要が増えている駐車場シェアサービスを提供するakippaをグループ化し、駐車場シェアに参入しています。
5. 日本マクドナルド
マクドナルド社もアンゾフの成長マトリクスを活用し、事業成長を遂げた企業のひとつです。100円バーガーや、朝マックといった様々な施策を展開し、『①市場浸透戦略』を実施。
その後も『②新製品開発戦略』で高品質なカフェメニューと魅力的なスイーツが楽しめる新形態の「マックカフェ」や、「マックデリバリー」など、様々な販売戦略が成功を挙げています。
6. IKEA
北欧スウェーデン発祥の世界最大の家具メーカーであるIKEAは、『③新市場開拓戦略』でスウェーデンと文化的に近いヨーロッパ市場への進出から開始し、のちにアジアへと市場を拡大。日本では知名度がない状態から新聞や雑誌、TVでのPR活動を通じて店舗オープン日から1日約3.5万人の来店客獲得を実現しました。
7. コカ・コーラ
アメリカで生まれた世界最大級の飲料品メーカーであるコカ・コーラ。『①市場浸透戦略』では、テレビCMなどで聞き覚えのある「No Reasonコカ・コーラ」というフレーズで消費者の心を鷲掴みにし、その後『②新製品開発戦略』によって、肥満を意識して離れていく既存顧客を食い止めるべく『ダイエットコーラ』を生み出しました。
このように、様々な業種の企業でアンゾフの成長マトリクスは活用されています。
上記のような誰でも知っている大企業のみならず、中小企業においてもアンゾフの成長マトリクスは有効です。
「アンゾフの成長マトリクス」における『多角化戦略』に欠かせない4つのタイプ
アンゾフによると、一番難易度が高く、リスクを伴う『④多角化戦略』はさらに4つに細分化できるといいます。
類似分野で新規事業を立ち上げる「水平型多角化」
「水平型多角化」とは、その企業が強みとする生産技術を活用し、既存事業と関連性の高い類似市場で展開していく方法です。例えば、トヨタのように、自動車製造から部品製造にまで手を伸ばしていくスタイルも水平型多角化のひとつであると言えます。
既存事業と組み合わせる「垂直型多角化」
「垂直型多角化」は、既存顧客や類似する見込み顧客に対して、新しい技術やノウハウをもとにサービスを展開していく方法です。垂直型多角化の典型として、企画・製造・流通・販売等を一挙に担うユニクロがあります。
企業が持つノウハウを活かして新事業を立ち上げる「集中型多角化」
「集中型多角化」とは、所有する生産技術の関連性が高い新製品を、これまでとは異なる新市場に投入するスタイルのことです。例えば、酒蔵がアルコール濃度の高い酒を消毒用アルコールとして販売する方法もこれに当てはまります。
新たな分野でゼロから新規事業を立ち上げる「集成型多角化」
そして最後に「集成型多角化」とは、「コングロマリット型多角化」とも呼ばれ、これまでとは全く異なる商品・サービスを新たな市場で展開していくハイリスク・ハイリターンな戦略です。大手コンビニエンスストアが店内にATMを設置し、店舗内で手数料を取る形で銀行業務を行うこともこれに該当します。
事業を多角化することで、主力事業となるひとつのサービスに頼るのではなく、複数の経営の柱ができるといったメリットがあります。また、異なる事業を組み合わせることで、新たなシナジーを生む効果も期待できます。
自社の経営資源を分散させ、複数の市場や事業分野に投資することで、ビジネスの変化に対応しながたも安定した売り上げを確保できるのも、多角化戦略の特徴と言えるでしょう。
アンゾフの成長マトリクスにおける注意点
マトリクスを利用するにあたって大切なことは、第一に自社の強みや、ビジネスモデルの付加価値をきちんと把握しなければなりません。その強みや付加価値を利用しながら、成長できるオプションを抽出していく必要があります。
また、生み出された戦略が最適なものであるか、実施前にコスト面や市場動向といった今後のハードルを明らかにした上で再度検討することが大切です。
新規顧客開拓の課題を解決!
FutureSearchで戦略的なアプローチと営業効率化を実現
新規顧客開拓には時間も手間もかかります。
見込み顧客の創出や、アポ取りといった営業に欠かせない『作業』を効率化できれば、営業効率を大きく改善できると思いませんか?
希望条件にマッチした法人リストの作成ができる「ビジネスサーチ」と、 企業HPの問い合わせフォームからのDM送信を代行する「コンタクトアシスト」、 さらにターゲティング型広告「ターゲティングアド」で営業の負担となりがちな作業を自動化でき、営業効率化を実現できます。
見込み顧客をその場で抽出!営業リストの課題を解決「ビジネスサーチ」
顧客像にマッチした企業が簡単にみつかる法人リスト抽出サービス「ビジネスサーチ」。
AIサーチエンジンを使用し、インターネット上にある企業サイトの事業・業務内容を解析、収集した独自のデータをもとに、 エリアや業種、資本金、従業員数、上場区分など希望条件にマッチした企業検索、営業アプローチに必要な法人リストを簡単に作成・ダウンロードすることができます。
新規開拓のドアノックを自動化「コンタクトアシスト」
「問い合わせフォーム営業」とは企業担当者の目に留まりやすい、企業HPのお問い合わせフォームを使った営業メールです。
企業のサイトの問い合わせフォームは、開封率・精読率が高いという傾向があります。
しかし、手作業での入力は営業の負荷を増やす原因にもなりかねません。
お問い合わせフォーム入力代行サービスである「コンタクトアシスト」では、面倒で時間のかかる繰り返し入力作業の手間の軽減を実現。
ご依頼後、専門スタッフが3営業日以内に専用システムにて送信作業を行います。
繰り返し入力作業の負荷や誤送信の課題を一挙に解決いたします。
狙った企業にピンポイント広告表示「ターゲティングアド」
また、お問い合わせフォームから配信できない企業へはメール配信の他に、ターゲット企業群への広告アプローチ『ターゲティングアド』も併用することで、 営業の負荷を圧倒的に軽減し、営業の取りこぼしを最小限に抑えることができます。
アンゾフの成長マトリクスにおける、「①市場浸透戦略」や「②新製品開発戦略」の場合、既存顧客と同条件の属性企業は「ビジネスサーチ」で簡単に抽出できます。
抽出した企業リストを使って既存サービスや新商品の案内を「コンタクトアシスト」で自動的にアプローチ。
既存顧客は除外リスト機能を使うことで、リストダウンロード後の重複チェックの無駄を省くことが可能です。
「③新市場戦略」や「④多角化戦略」の場合は、エリアや企業規模など既存顧客とは属性を変えて「ビジネスサーチ」で抽出し、 導き出したリードに対して既存サービスや新商品の案内を「コンタクトアシスト」で簡単にアプローチすることができます。
アンゾフの成長マトリクスをもとに、自社のこれまでの事業拡大の傾向、強み・弱みを確認し、事業拡大の分析・検討に活用することができるのです。
営業リスト枯渇、新規アポ獲得、見込み顧客へのアプローチの課題を一挙に解決できる、『FutureSearchの営業支援サービス』をぜひご活用ください!
まとめ
いかがでしたか?
今回は経営戦略を検討する著名なフレームワークのひとつである、「アンゾフの成長マトリクス」について、概要と目的、メリット、そしてアンゾフの成長マトリクスを使って事業成長を遂げた企業事例をご紹介しました。
アンゾフの成長マトリクスを使うことで、既存製品を今の市場でさらに展開し続けていくべきか、もしくは新しい市場に出るべきかなど、企業成長戦略の方向性を模索することができます。マトリクスが示す4つの成長の可能性を可視化し、経営戦略に活かしましょう。