ニューノーマルのマーケティングDXを成功に導く3つのポイント
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この数年、インターネットや書籍などでよく目にする「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉。
元々は2004年にスウェーデンの大学教授、エリック・ストルターマン氏が提唱した 「デジタル技術が人々の生活を、あらゆる面でより良い方向に変化させる」という考え方を起源とした言葉で、 ビジネスにおいてはAIやIoT、ビッグデータといったテクノロジーを活用して組織体制や業績を抜本的に改革することを示します。
2024年に独立行政法人 中小企業基盤整備機構が行った調査によると、DXの成果が出ている(「成果が出ている」「ある程度成果が出ている」)企業は81.6%と回答しています。
このことからも、今後も確実にDXを活用する動きが続くことが予想されます。
そこで今回は、ニューノーマルのマーケティングDXを成功させる3つのポイントについてご紹介します。
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もくじ
マーケティングにおけるDXとIT化の違い
DXは仕事にデジタルを導入することと思われがちですが、 IT化のようにIT技術・デジタル技術デジタルツールで業務効率化やコスト削減を図ることだけを指しているわけではありません。
経済産業省によると、DXはIT技術・デジタル技術デジタルツールを活用して、 ビジネスモデル全体や組織、企業文化・風土をも変革し、競争上の優位性を確立することと定義されています。
また、DXを推進することが出来れば、2030年の実質GDPにおいて130兆円の押上げを期待できると予測していることからも、DXの推進はますます加速することが予想されます。
もしも「DX」が進まない現状のままではIT人材の不足が懸念され、既存のレガシーシステムが障壁となり、 2025年から2030年までの間に年間最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があると発表しています。
昨今のリモートワークの浸透や、非対面推奨の動きに伴い、多くの消費者は購買の場をオフラインからオンラインへと変えはじめています。
オンラインでのコミュニケーションに費やす時間が増えたことで、購買ファネルにおけるブランド・製品と消費者の関係性に変化が生じていることからも、 私たちの暮らしの中でデジタルコンテンツが担う役割はますます重要となってきています。
また、2020年12月に経済産業省が発表したDXレポートの中でデジタル化に関する取り組み状況について、 「現在のビジネスモデルを継続しつつ、新しいビジネスモデルも開拓する必要がある」との回答率が大きく上昇しています。
このようにオフラインでの接点が減少した昨今では、オンラインで自発的に情報収集をする購買担当者(リード)が急増しています。
そのため、従来のWebマーケティングだけではなく、リードがあらゆるデジタルを通じて行動したデータを分析、活用するデジタルマーケティングの推進が求められています。
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マーケティングにおけるDX導入成功事例
実際に日本でDXをマーケティングに取り入れた成功事例にはどのようなものがあるのでしょうか。
日本コカ・コーラ社の公式アプリ“Coke-on”
身近なものとしては、自販機をIoTマーケティングに活用した世界初の事例である日本コカ・コーラ社の公式アプリ“Coke-on”が挙げられます。
数多くあるアプリの中で、コカ・コーラ社だけにしかできないものは何かと考えたとき、飲料メーカーとして生活者との接点が持てるモーメントにアプリを導入することで、 アプリを起動するたびに気持ちが“ON”になるような体験を提供したいと考え、新しい公式アプリ“Coke-on”を2016年4月にリリースしました。
当時、同社は会員数1300万人を抱える『コカ・コーラ パーク』を運営していた一方で、これだけ自動販売機の台数が多数ある国は他にはないという点にフォーカスし、 自動販売機を活用したスタンプ式ロイヤリティープログラムを持つ“Coke-on”アプリへの切り替えを行いました。
Coke ONは「買う/飲む/楽しむ」といった3つのモーメントを想定してリリースされ、Coke ON対応自販機にかざして商品を購入すると1ポイントが貯まり、 15ポイントたまると対応自販機からコカ・コーラ社のドリンクが無料で1本もらえるという仕組みになっています。
その他にもスマホを持ち歩くとアプリが歩数をカウントし、週刊目標数を達成するとポイントがもらえる仕組みや、 サンプリング、キャッシュレス機能など、様々なサービスが追加され続け、ユーザーの支持を獲得し続けています。
アプリを活用することで、誰がいつどこでのどのブランドの商品を購入したのかが分かるため、 購入したブランドや商品に関連する価値の高いコンテンツを配信することが可能になりました。
同アプリはリリースから約4年後の2021年1月末に2500万ダウンロードを突破し、スマホの飲料アプリでは国内トップ(同社調べ)のダウンロード数を実現しました。
コンビニやスーパーの登場による自動販売機離れによる優位性に課題を抱えていた同社のDXを活用したスマートフォンアプリは消費者の支持を得ており、 同社によると今後は自販機とつながるアプリだけにとどまらない本当の意味でのエンタープライズアプリへ進化させていくと明言しています。
ユニクロのDX戦略:アプリとデジタルサプライチェーンの融合
ファーストリテイリングが展開するユニクロは、デジタル技術を活用して顧客体験を大幅に向上させた代表的な成功例です。
ユニクロは、公式アプリやECサイトを中心に、リアルとデジタルを融合させたオムニチャネル戦略を推進しています。公式アプリでは、在庫確認、店舗受け取り、購入履歴の確認、パーソナライズされたレコメンド機能など、利便性の高い機能を搭載。さらに、ユーザーの行動データをもとに、商品開発や販売戦略の改善にもつなげています。
また、デジタルサプライチェーンの整備により、顧客のニーズをリアルタイムで反映できる生産体制を実現。例えば、アプリやオンラインストアでの検索データを分析することで、人気商品の再入荷や地域ごとの需要に即応できるようになっています。
このようなデジタルの活用により、ユニクロはリアル店舗とデジタルをシームレスにつなぐ顧客体験を提供し、競争優位性を確立。パンデミック下においても、アプリのユーザー数やEC売上は着実に成長を続けています。
このように、DX活用によって消費者に新たな価値あるサービスを提供し、優位性を確立する企業は増えてきています。
DXを成功させる3つのポイント
DXを真に成功へ導くためには、何が重要なのでしょうか?ここでは、多くの成功企業に共通する「3つのポイント」に絞ってご紹介します。
1. ビジネスモデル全体を見直す経営戦略・ビジョンの作成
まずは既存のビジネスモデルが抱えている課題を洗い出し、デジタル化できる点を見出しします。
ポイントは単純な効率化や単一化を解決するためのデジタル化ではなく、ビジネスモデル全体を見直すような戦略・ビジョンを作成することです。
業務プロセスの再設計だけではなく、「顧客に新たな価値を提供するものであるか」を念頭に、課題の再整理を行い、アイデアを量産し、ソリューションスケッチを行います。
DXの具体的な取組領域や、成功事例をパターン化し、企業において具体的なアクションを検討する際の手がかりとなる「DX 成功パターン」を策定します。
プロジェクトの途中で上と現場で認識の違いを生み出さないためにも、ここで作成した戦略・ビジョンは経営陣だけではなく、現場全体まで浸透させましょう。
2. 既存システムの見直しとフレキシブルな開発
次に既存のシステムをどうするかも大きなポイントです。
過去の技術によって開発されたシステムは、大きなレガシーとなりDX化の障壁となります。開発担当、運用担当と密に連携し、DX化できる部分と検討が必要なシステムの整理を行います。
これまでつぎはぎだらけで作られてきた複雑なシステムほど、ここのハードルは高くなります。
開発フェーズでは、QCDS [ 品質(Quality),コスト(Cost),納期(Delivery),スコープ(Scope)]をある程度柔軟に変更できる、フレキシブルな開発を採用し、 より速くより柔軟なものが望ましいとされます。
3.アジャイル的な実行管理
次のステップは実行管理です。グロースフェーズでは、現場主導のトライ&エラーによって、社員がデジタル化の効果を実感します。
また同時に課題を見出し、改善策を実装していくというプロセスが必要です。
ニューノーマル時代において企業を取り巻く環境は急激に不安定化し、新たな事業環境にあわせた事業変革はあらゆる業界において最優先の取組事項となっています。
こうした中で、迅速な環境変化への対応や、システムのみならず企業組織・風土をも変革していくことは、企業が取り組むべきDXの本質的な課題といえるでしょう。
まとめ:DX成功のカギは“目的意識”と“継続力”
IT技術・デジタル技術デジタルツールを活用して、単なる効率化・生産性向上だけではなく、 ビジネスモデル全体や組織、企業文化・風土をも変革し、競争上の優位性を確立させるDX。
経済産業省によると、デジタル変革に対する現状への危機感を持つ国内企業は増加しているものの、 「DXの取組を始めている企業」と「まだ何も取り組めていない企業」に二極化していると言います。
しかし、いつの時代も時流や環境に適応させたビジネスが生き残っていくように、これからの時代においてはDXの推進が最も求められています。
まずは現状を把握してデジタル化できる点を洗い出し、新たなビジネスモデルを検討し、DXを進めていきましょう。