顧客イメージづくり―発展編「RFM分析」で優良顧客を逃さない!-
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新規顧客の開拓は、営業活動の中でも特に難易度が高く、成果が見えにくい領域とされています。
その成功の鍵を握るのが「顧客イメージづくり」、つまりターゲットとなる顧客層の明確化です。
本記事では、新規顧客獲得に向けた“3ステップ”のうち、最初のステップである「ターゲット顧客仮説の構築」に焦点を当て、基礎編で紹介した「デシル分析」よりさらに深掘りした手法――「RFM分析」について、わかりやすく解説します。
「どのような顧客が次の購買につながるのか?」を可視化し、戦略的な営業アプローチへとつなげるためのヒントをお伝えします。
この記事はこんな方におすすめです |
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もくじ
- 新規顧客開拓の“第1歩”は顧客イメージづくりから始まる
- 顧客イメージがなければ、営業は迷子になる
- 顧客との関係を深め、最適なマーケティング戦略を策定する「RFM分析」
- RFM分析の実践ステップ
- RFM分析を活用した企業事例
- RFM分析で見えてくる、新しい営業戦略
- まとめ:仮説に基づいたアプローチで、成果の出る新規開拓へ
新規顧客開拓の“第1歩”は顧客イメージづくりから始まる
新規顧客の開拓は、営業活動の中でも特に難しい領域です。誰に、どのようにアプローチするべきかを見失えば、せっかくの営業努力も実を結びません。
そんなとき、最初に取り組むべきなのが「顧客イメージづくり」です。
本記事では、基礎編で紹介した「デシル分析」をさらに一歩進め、“より精度の高い顧客仮説”を立てるための「RFM分析」について、実践的なステップとともにご紹介します。
☞基礎編の「デシル分析」について詳細はこちら
顧客イメージがなければ、営業は迷子になる
新規顧客を開拓する際、ターゲットが曖昧なままだと、営業活動はどうしても手探りになってしまいます。
経験豊富な営業担当者であっても、「勘」や「過去の成功パターン」だけに頼っていては、持続的な成果を上げることは難しいでしょう。
だからこそ、データをもとにした「顧客イメージ=ターゲット仮説」の構築が重要なのです。
顧客との関係を深め、最適なマーケティング戦略を策定する「RFM分析」
基礎編で紹介した「デシル分析」は、売上順に顧客を10等分して分析するもので、非常にシンプルで使いやすい手法です。
しかし、「誰が、どのくらいの頻度で、どれだけの金額を使ってくれているか」といった詳細な傾向を把握するには、RFM分析が効果的です。
RFMとは:
- R(Recency)- 最終購買日
顧客が最近いつ購入したかを示します。最近購入した顧客は、ブランドや製品に対して高い関心を持っている可能性が高いため、この指標は重要です。
例:最後の購入が1ヶ月前と5年前では、関心度や反応の速さに違いが出ることが予測できます。 - F(Frequency)- 購買頻度
顧客がどれくらいの頻度で購入しているかを示します。頻繁に購入する顧客は、リピーターとしてブランドに忠実である可能性が高く、長期的な関係を築きやすいと考えられます。
例:過去6ヶ月に何度も購入している顧客は、高頻度で購入している顧客として高評価されます。 - M(Monetary)- 購買金額
顧客がこれまでにどれくらいのお金を使ったかを示します。高額な購入をする顧客は、ビジネスにとって重要な顧客とされ、特別な対応が必要です。
例:1回の購入で高額な商品を購入する顧客は、重要なターゲット層として優先されます。
この3つの視点から顧客をスコアリングすることで、“優良顧客像”がより立体的に浮かび上がります。
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RFM分析の実践ステップ
ここからは、RFM分析を実践するための具体的なステップを紹介し、データの収集から顧客のセグメンテーション、そしてその後のマーケティング戦略の立案まで、順を追って解説していきます。
ステップ1:既存顧客データの整理
まずは、既存顧客の「最終購買日」「購買回数」「累計金額」といったデータを用意します。ExcelやCRMに蓄積されている情報を活用します。
ステップ2:スコアリングしてグループ化
各顧客に対して、R・F・Mそれぞれの項目に1〜5点でスコアをつけていきます(5が最も高評価)。これにより、「最近よく購入していて、高額な顧客」などのグループが見えてきます。
ステップ3:優良顧客の特徴を抽出
高スコア群の属性や業種、購入傾向を分析することで、理想的な“新規ターゲット顧客像”が明確になります。
RFM分析を活用した企業事例
RFM分析を活用した企業の成功事例として、あるEコマース企業のマーケティング戦略を紹介します。この企業は、膨大な顧客データを持ちながらも、効果的にターゲットを絞る方法に苦慮していました。そこで、RFM分析を導入し、顧客セグメントごとに異なるアプローチを取ることで、売上の向上を実現しました。
1. 最優良顧客の発見と優遇施策
まず、RFM分析によって「Recency(最新購入日)」「Frequency(購買頻度)」「Monetary(累計購入金額)」の3つの基準で顧客をセグメントしました。その結果、直近の購買頻度が高く、累計購入金額も多い顧客層(R1、F1、M1に分類された顧客)が「最優良顧客」に該当していることがわかりました。この顧客層には、特別な割引や限定商品の案内を送り、購入意欲をさらに高める施策を実施しました。結果として、最優良顧客のリピート率が30%以上向上しました。
2. 新規顧客へのアプローチ
RFM分析の結果、新規顧客層(R3、F3、M3に分類された顧客)へのアプローチ方法も改善されました。新規顧客はまだ購買頻度が低いことが分かり、購買促進のための「初回購入者向けの特典」や「ウェルカムメール」を送ることにしました。これにより、初回購入後のリピート率が大幅に改善され、顧客の定着率が上がりました。
3. 離脱リスクのある顧客の再獲得
さらに、RFM分析を通じて、最近購入していないが過去に大きな購入をしていた顧客(R2、F3、M2に分類された顧客)が「離脱予備顧客」であることが判明しました。この顧客層には、再度購入を促すためにパーソナライズされたリマーケティング広告を配信しました。顧客が再び購入に至った例も多く、結果的に離脱予備顧客の離脱率を20%減少させることができました。
この企業はRFM分析を活用したターゲティング施策を通じて、全体の売上が15%増加し、最優良顧客からの収益が50%以上を占めるようになりました。さらに、リピーターの獲得と離脱予防に成功し、長期的な顧客関係を築くことができました。
この事例からもわかるように、RFM分析は顧客を細かく分類し、それぞれに最適なアプローチを取ることで、効率的に売上を向上させる強力なツールとなります。
RFM分析で見えてくる、新しい営業戦略
RFM分析によって得られたターゲット像をもとに、見込み顧客リストを精査すれば、より精度の高い営業アプローチが可能になります。無作為なアプローチを減らし、反応率の高い顧客層に集中することで、「質」の高い新規顧客の獲得につながるのです。
まとめ:仮説に基づいたアプローチで、成果の出る新規開拓へ
「新規顧客を探す」という営業活動は、実は“既存顧客の深掘り”から始まります。
RFM分析を活用し、優良顧客の特徴を抽出することで、“次に出会うべき顧客”の姿が見えてきます。
仮説に基づいたアプローチは、営業活動にブレない軸をもたらし、成果へとつながる近道となるでしょう。